高松地方裁判所 昭和47年(行ウ)8号 判決
観音寺市春日町甲二八九八の一
原告
藤縄保二
右訴訟代理人弁護士
高村文敏
観音寺市観音寺町字三反畑
被告
観音寺税務署長 山崎二鶴
右指定代理人
高松法務局訟務部付検事 河村幸登
同
高松法務局訟務部付法務事務官 中野大
同
高松国税局国税訟務官 松下耐
同
同 真鍋一市
同
高松国税局大蔵事務官 大西敬
同
同 横山正之
主文
本件訴えを却下する。
訴訟費用は被告の負担とする。
事実
一 原告訴訟代理人は「被告が原告に対して、昭和四六年七月八日付でなした昭和四五年度分所得税についての更正処分はこれを取消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求め、その請求原因として、
(一) 原告は、観音寺市三架橋通りにおいて、食堂を営んでいるものであるが、昭和四五年度分の営業所得を七五万円と申告した。
(二) ところが被告は、右申告に対し、昭和四六年七月八日、原告の営業所得額を一二一万三、二七六円、所得税額を一万九、一〇〇円とする旨の更正処分(以下本件更正処分と言う)をなした。
(三) そこで原告は、右更正処分を不服として、被告に対し同月一五日異議申立をしたが、同年一〇月一二日棄却されたので、更に同月二七日訴外高松国税局長に対し審査請求をしたところ、昭和四七年四月二九日これを棄却する旨の通知を受けた。
(四) しかしながら、原告の昭和四五年度営業所得は、原告申告額のとおりであり、その税額は免税されるべきであるから、被告のなした右更正処分は違法である。
と述べ、被告の本案前の主張事実は認める旨陳述した。
二 被告指定代理人は、本案前の答弁として「本件訴えを却下する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求め、その理由として、「被告は、昭和四七年一二月七日、本件更正処分を取消したので、本訴は、訴えの利益を欠いた不適法な訴えというべきである。」と述べ、本案について「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求め、請求原因に対する答弁として「請求原因(一)ないし(三)項は認める。但し、本件申告は、訴外藤繩マリ子が、同人の昭和四五年分の営業所得について申告したものであり、審査請求は、訴外国税不服審判所長に対してなされたものである。同(四)項は争う。」と述べた。
理由
本件訴えの適否について判断するに、被告が、昭和四七年一二月七日本件更正処分を取消したことは当事者間に争いがなく、右事実によれば、本訴は右の時点からその取消しの対象を失い、訴えの利益を欠くに至つたものと言わなければならない。
次に訴訟費用の負担について按ずるに、本訴は一旦適法に提起せられた後、被告の本件更正処分取消しにより、訴えの利益を欠くに至つたものであつて、原告の本訴提起並びにその後の訴訟追行行為は総て原告の権利の伸長に必要なものであつたというべきであるから、訴訟費用は民訴法九〇条によりすべて被告に負担せしめるのを相当とする。
よつて主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 林義一 裁判官 磯部有宏 裁判官 市川頼明)